愚痴口

■ いわゆる「自炊」潰し的な諸々の件について

• 出版社からスキャン代行業者への質問状を全文公開、潮目は変わるか - 電子書籍情報が満載! eBook USER

裁断のみならずスキャンまで代行する業者をターゲットに質問状という名の脅しを突き付けました的なお話。記事中で気になったのは以下の内容。

　著作権法第30条1項では、著作物の私的使用を目的とする場合は、その「使用する者が複製することができる」と定められている。また、30条1項1号では、「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合」、つまりコンビニエンスストアなどに置かれたコピー機などでコピーする場合は除くとある。しかし、スキャン代行業者が提供しているサービスは、「使用する者」ではない業者が主体で、かつ1号の自動複製機器に該当するため、業者には可罰的違法性があり、それを依頼した者も違法であるという見解が一般的だ。ただし、これは現行法の解釈であり、判例が存在するわけではないため、現時点ではグレーゾーンという位置づけにある。

要するに、例えば図書館の資料をコンビニのコピー機でコピーするのは私的使用目的でも複製不可との事。実際やった事がある身としては、知らず知らずのうちに著作権法違反行為をやらかしてたかと大変申し訳ない気持ちになったわけです。

• 著作権法

（私的使用のための複製）

第三十条 　著作権の目的となつている著作物（以下この款において単に「著作物」という。）は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること（以下「私的使用」という。）を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

一 　公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器（複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。）を用いて複製する場合

と思ったら、著作権法の附則にはこんな内容があるようです。

（自動複製機器についての経過措置）

第五条の二 　著作権法第三十条第一項第一号及び第百十九条第二項第二号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。

という事で、コンビニコピー機の使用はとりあえずセーフなんだとかどうとか。ITmediaは何故この点を無視した記事を書いたのか問い詰めたい。儂の心配を返せ。

とまあ冗談はさておき、この条文が権利者の側に都合が悪いのは紛れもない事実のようで、適当に検索してたら権利者による条文削除の主張を発見。

• 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会（第3回）議事録

つい先日、今年の7月7日に行われた小委員会の議事録。この中の資料4が、「社団法人日本書籍出版協会・社団法人日本雑誌協会」の提出した資料「著作権法附則第5条の2の削除について」。

資料中の「附則５条の２がもたらす影響」を見ると、主にスキャン代行業者やら「私的利用以外」を問題にしているように見えます。

ところが「複写機・スキャナの普及」を見ると、個人用も業務用もドキュメントスキャナもフラットベッドなタイプも、挙句家庭用のプリンタ複合機まで全部引っくるめて数字を挙げていたり、更に「附則第５条の２の削除の理由」では「新しい複製・通信技術の進展に伴い、立法当時は存在しなかった文書・図画のデジタル複製による私的領域の範囲を超えた流用の蓋然性が大きくなっている」と述べていたりもします。

業者潰しの後は公衆の使用に供するとか関係なく、業者委託のない完全個人レベルでの「自炊」からも徹底して金を取りたいという意図が見える気がするのですが、気のせいですかそうですか。

八方手を尽くして出来る限り金を取りたいという行動は権利者としては当然なのでしょうが、金を払った挙句得られるのは不便のみという状況は利用者としては当然勘弁願いたいところでしょうからして、両者の利権がぶつかり合った結果としてどういう結論に落ち着くのか、無力な一消費者としては日々のテキトーな購買行動を通じて誤差扱いの意思表示をしつつ見守りたいところです。